2014年7月27日日曜日

NFC、ウェアラブル、IoT、そしてビッグデータ




クラウドやスマートフォンにより、社会を変える大きな革新の波を生み出した現代のIT。この次に来る波として、市場では次の三つに注目が集まっています。一つはウェアラブル・デバイス。二つ目は全てのものがネットに接続されるInternet of Things (IoT)。そして三つ目はそれらが生み出すビッグデータです。

この三つの動きには共通点があります。それはリアル、いわゆる実際の物理空間の情報がメインターゲットになっていることと、その情報交換の柱としてワイヤレス通信技術が駆使されている点です。

今回は、これからのイノベーションの鍵を握る3つの要素: ウェアラブル、IoT、ビッグデータと、それらとNFCとが結びつくイノベーションについて触れてみたいと思います。


ウェアラブル、IoTそしてビッグデータの三つは、いずれも概念自体は以前からあり、これまでも様々な試みが行われていました。ここにきて急速に発達し実用化が進んだ背景には、様々なデバイス技術の進化もさることながら、ワイヤレス通信技術の進化が大きく貢献しています。

20世紀初頭、モールス伝送に始まったワイヤレス通信は、僅か100年余りで高度な進化を遂げました。マクロなレベルでは、3Gに始まり今やLTEで数百Mbpsのワイヤレス・ブロードバンド接続を可能にした携帯電話通信や無線LAN通信(Wi-Fi)が、ミクロなレベルでは、数十m程度の距離を結ぶBluetoothから数センチの間を繋ぐNFCまで、様々なワイヤレス通信技術が実用化され、世界中誰でも自由かつ簡単に使える環境が整備されつつあります。

これらのワイヤレス通信技術の最大の特徴は、従来の固定されていた通信回線や接続ケーブルに縛られることなく、いつでも・どこでも・何とでも、自在に接続して情報を交換することを可能にしたことです。これは実に画期的なイノベーションであると言えます。なぜなら、もしこのワイヤレス通信がなかったとすると、情報処理デバイスは全てケーブル、つまり物理的な線で結ばれる必要があり、電車や街中でスマートフォンを見たり、ウェアラブルでARを操作したり体の情報を計測するといったことは不可能だったからです。

今、このワイヤレス通信は、これまでの人と人とのコミュニケーションから、あらゆる「モノ」とのコミュニケーションへと拡がろうとしています。ここでNFCが果たす役割は非常に大きなものです。例えば、荷札やチケットなどこれまで紙に印刷されていた情報を、今ではNFCにより瞬時にデジタル・データとして読み取ったり書き込んだりすることが簡単に実現出来ます。人を介して入出力されていた物理空間の様々なデータが、これからはダイレクトにデジタルの形で、モノからモノ、機械から機械へと伝えることが可能になる訳です。

このことにより、眼鏡やインカム、スマート・ウォッチといった様々なウェアラブルが相互接続しリアルタイムでデータを交換出来ることはもとより、周囲の様々なモノや機械とも情報交換が可能となります。さらに、それらデータを常時ネット上で集計しリアルタイムで分析することで、ウェアラブル + IoT + ビッグデータを結ぶシステムが実現し、瞬時に最適化されたソリューションを手にすることが出来るでしょう。

こうして考えてみると、NFCはとても小さなタグ、非常に短い、数センチの距離を結ぶワイアレス通信技術ですが、次世代のITの核となるウェアラブル、IoT、そしてビッグデータと融合することにより、巨大なイノベーションへと成長する可能性を秘めた大きな存在です。

2014年7月18日金曜日

金沢で創るNFCの未来








NFC Forumも協賛社として参加・支援中の、ITpro主催Androidアプリコンテスト「Android Application Award」、通称A3(エーキューブ)。今回のブログではA3の開発イベントと、8月に金沢で開催予定のNFC関連のハッカソン「Xperia Wearable Hackathon」ご紹介します。


数多くあるAndroidアプリコンテストの中でも、今年で6回目を数えるA3には毎回多くの作品応募があり、幾つものユニークなアプリが生まれました。なかでもNFCを活用した応募作品は2010-2011年の大会から登場する程、NFCとつながりが深いコンテストです。

全国の開発者にコンテスト参加を呼びかけ、開発の機会となるアイデアソン及びハッカソンを各地で開催していることも、もう一つのA3の特徴です。

昨年の第5回となるA3 2013では、NFC活用の新しいアイデア創出を支援すべく、2013年3月に金沢市の後援を得てアイデアソンを開催、「Net x Real “際” を超える」をテーマに参加者全員でNFCを活用する未来のソリューションについて、グループワークを通じてユニークなアイデアの創発にチャレンジしています。

アイデアソン等のグループワークによりアイデアの創造にチャレンジする時、参加者のイマジネーションを刺激し創発を促す「場」の選択や構成は重要なポイントです。昨年3月に開催された金沢のハッカソンでは、金沢市の協力によりアーティストの皆さんが通う金沢美術工芸大学のキャンパスが会場に選ばれ、普段のオフィスや会議室とは違う雰囲気に刺激を受けながら、参加者の皆さんのグループ・ディスカッションは大いに盛り上がりました。






それにしても、なぜ金沢なのでしょうか。
実は、加賀百万石の城下町として栄えた金沢は、深い歴史と工芸が盛んな観光地という顔の他に、ITを軸とするイノベーションへ果敢に挑戦する街という顔を持っています。






例えば金沢市は、IT・映像・デザインなどクリエイティブ産業に革新を起こすベンチャーの発掘・育成を支援する「クリエイティブ ベンチャーシティ 金沢推進事業 (CVCK)」を展開。セミナーやワークショップ等に、開発者・クリエイターなど毎回多数の市民の方が参加されています。

また、ITの力で市民により地域問題の解決に取り組むCode for Kanazawaの活動も有名で、開発成果の一つであるゴミ収集のサポート・アプリ「5374(ゴミナシ).jp」は日本各地に広がりつつあるなど、金沢はイノベーションに取り組む気風に溢れています。

この歴史深い金沢の美しい町家が立ち並ぶ主計町(かずえまち)の近くに、ベンチャーのインキュベーションに取り組む一般社団法人GEUDAのオフィスがあります。今年4月にオープンしたオフィスは1928年に建てられた古い洋館をリノベーションしたもので、歴史の深みを感じさせる空間は今、日々開発に取り組む若き起業家達の熱気に溢れています。

今年のA3 2014では、注目を集めるNFCやBLEなどを活用した新たなアプリの開発・応募を支援すべく、Xperia・SmartBand・SmartWatch2などのデバイスとNFC・BLEを駆使するハッカソン「Xperia Wearable Hackathon」をここ、アイデアを刺激する金沢のGEUDAで8月2日・3日の2日間の日程で開催予定です (参加申込はこちらから)。このハッカソンで開発されたアプリは、A3 2014の応募に直結される構成となっています。

NFCの未来を切り開く新しいアイデアを、この夏ぜひ金沢で形にしてみてください。

2014年7月10日木曜日

NFCとMobile - かざして つながる -






定期券や電子マネーの情報を、かざすだけで伝えられる。
駅の改札やコンビニエンスストアなどで今では当たり前となった光景ですが、ここで使われている無線通信技術、ご存知でしょうか?


遠く離れた相手と通信する衛星通信や携帯電話と異なり、僅か数センチの近距離を無線で結ぶ技術は近距離無線通信技術と呼ばれます。現在、 13.56MHzの周波数帯を用いた方式は、Near Field Communication いわゆるNFCとして国際標準規格にまとめられ、私たちの生活にも広く利用されています。

例えば、ICカード定期券やEdy等の電子マネーのカードは勿論、ICカード化された運転免許証や住民基本台帳カードにもNFCが入っている他[1]、小さなタグやシールにも組込まれ、ID情報が入ったリストバンドや貨物の荷札等に使用されるなど、あらゆる分野に普及しつつあります。

ところで、「リーダーにかざして情報を読み取る」と記しましたが、このNFCを読み取るリーダーは、お店のレジや改札機だけでなく、実は日本中の多くの方が毎日持ち歩いています。そう、皆さんがお持ちのスマートフォンはNFCリーダーでもあるのです。NFC対応のスマートフォンはこれまで累計で70機種普及台数は1392万台に達しています[2]

日本では世界に先駆けてFeliCaが携帯電話に搭載した他、Androidスマートフォンへの搭載も進み、モバイル・デバイスの世界ではNFC対応の最先端を行く国といっても過言ではありません。

いつでも・どこでもインターネットに接続され、様々なアプリケーションが利用可能なスマートフォンとNFCの組合せがもたらす可能性は無限大です。これまでは交通機関のチケットや電子マネー等での利用が中心でしたが、ネットワークと様々なリアルな"もの"、そしてサービスの三つがスマートにダイナミックに結ばれ全ての情報が自在に行き交うその世界から、様々な革新が生み出されるものと期待されています。





NFCの標準化と普及推進にあたるNFC Forum Japan Task Forceでは、今年、NFCのさらなる成長とこうしたイノベーションの実現を目指し、ITproが主催するAndroidアプリケーション・コンテスト「Android Application Award 2014」(A3)の協賛を通じてアプリケーション開発者を応援し、NFCが切り開く未来を探ってゆきます。

NFC Forum Japan Task Force 2014 マーケティング実行委員会が運営するこのブログでは、A3の活動の模様をはじめ、NFCの最新情報や未来の可能性を定期的に紹介してゆく予定です。ぜひご期待ください!


[1] 国内運転免許証は2007年からICカードへ切替が始まりました。このカードにはNFC-B(通称Type-B)が使用され、リーダーにかざすことで情報を読み取る事が出来ます。 住民基本台帳カードも同様です。また、ICカード定期券やEdy等の電子マネーのカードに広く使用されているFeliCaは、NFCの共通規格に各種セキュリティ処理を加えた形で構成されています。詳細はこちらをご参照ください。