2014年12月27日土曜日

空の旅を変えるNFC

photo by Robert Course-Baker, Flickr

「紙」ベースだった航空券と搭乗券

飛行機を乗る際に欠かせないものは航空券と搭乗券。これまで紙ベースで使用されてきたこの二つのチケットは、今、急速に電子化が進んでいます。

つい10数年前までは、航空券といえば紙で「発券」されたもので、国際線ともなると赤いカーボン紙が裏面に付き、経由便や復路など複数の路線の航空券が一つに合冊されていました。

この航空券、全世界の航空会社240社が加盟するIATAが1930年に様式を統一、1972年にはIATA Billing and Settlement Plan (BSP)を導入し、航空券のカバーにはIATAのロゴが印刷される様になります。青いカバーの細長いチケットに翼をシンボライズしたIATAのマークを見た方も多いのではないでしょうか。

チェックインをすると航空券は搭乗券に引き換えられるのですが、こちらは堅めの紙に座席番号が印刷されたもので、国際線の場合、これに航空券をステイプラーで留めたりすることも。どちらも紙のチケットである以上、往々にして失くしたり盗まれたりすることも多かった様です。

2008年にeチケット化

航空各社では早くから予約発券システムが電子化されてきましたが、インターネットが普及した21世紀に入っても、航空券や搭乗券は長らく紙のままでの運用が続いていました。

紙の場合、発券装置が必要なことは勿論、発券カウンターの設置やチケットの郵送など、かなりの手間を必要とします。この効率化を目指し、一部の航空会社では徐々に電子化を進めてきましたが、2008年、ついに航空業界全体で航空券の完全電子化が完了。現在は全て電子チケット(eチケット)に移行しています。そのため、現在皆さんが飛行機を予約した際に手にするのはチケットではなく、このeチケットの「控え」となっています。

次なるチャレンジは搭乗券

搭乗券については、いまだ紙ベースでの運用が主流ですが、こちらにも電子化の波が押し寄せています。日本国内では、早くからANA・JALの両社がeチケット控えに印刷されたり携帯メールで受信したQRコード(二次元バーコード)での搭乗を実現。その後FeliCaを利用したおサイフケータイの登場により、この携帯、ないしは各社がそれぞれFeliCaカードで発行したマイレージ、ないしクレジットカードを搭乗口でタップするだけでも搭乗可能です。

現在のところこの搭乗券の電子化については、対応端末を持っていない方や、データを記録した媒体(携帯端末)の故障やバッテリー切れ等を勘案して紙での発行・運用が並行して続いており、チェックインで預けた手荷物に付けられるタグ(バゲッジ・クレーム・タグ)については依然として紙ベースのままですが、今後、NFCによる電子化が進むものと期待されています。

搭乗券をNFC化することで、(紙による)発行の手間や紛失等の問題を解決出来る他、フライトや座席の変更も簡単。マイレッジカードや、空港や機内販売での支払いに使えるモバイル決済機能との統合も可能となる為、新しい成長戦略の一つとしても有望視されているテーマです。

NFC ForumとIATAによる共同検討

NFC Forumでは、こうした航空サービスにおける各利用シーンでのNFC利用について、リエゾンパートナーとしてNFC Forumに参加されているIATAと共同で検討を行い、2013年にガイドライン「NFC Reference Guide for Air Travel」を発表しました(発表文はこちら)。このガイドラインはNFC ForumのWeb site上で公開されています(ダウンロードはこちら)

世界中で利用されているスマートフォンや各種ウェアラブルへのNFC搭載により、いつでも・どこでもフライトを予約、手荷物のNFCタグにフライト情報をタップして書き込みチェックイン、紙は何も持たずに搭乗するという日は、もうすぐそこまで迫っています。

2014年12月24日水曜日

医療機器とNFC

photo by Konstantin Lazorkin, Flickr


デジタル化する医療器具

ちょっと熱っぽいな?と思った時、体温を測る体温計。昔は水銀を使ったアナログ式で、測る前に振って温度を下げていたものですが、最近はボタン一つでリセットし、測定が終わると音で知らせてディスプレイに体温を表示するデジタル式が主流です。

今や体温計以外にも、血圧計、心電図、体重計など、様々な医療器具がデジタル化され、家庭のみならず様々な医療現場でも広く利用されています。

タップしてデータ転送出来るNFC

ところが、これらデバイスのデータ出力はディスプレイ表示のみ、もしくはプリンターで印字出力されるケースが大半を占めることから、データの読み取り・外部記録に手作業が介在し、誤判読や記入ミスが起きることも。

測定データをデジタルのまま転送・記録出来れば、判読・転写時のミスを防げる他、治療記録に即座に反映出来るためとても効率的です。

こうした体温計や血圧計などの医療器具から測定データを読み取る方法として、NFCを利用する機器が増えつつあります。スマートフォンやタブレット・PCのNFCリーダーに測定器をタップするだけでデータを読み取り、そのままダイレクトに患者さんの診療データに反映することで出来ます。現在、テルモ株式会社の「HRジョイント」シリーズなど様々な製品が実用化され、実際の医療現場で利用されています。

在宅ケアへの広がり

また、高血圧や糖尿病など、生活習慣病の在宅治療の際には、血圧や血糖値の定期的なモニタリングが不可欠ですが、血圧計や血糖値計にNFC対応のスマートフォンをタップするだけでデータり読み取りが出来ると、転記ミスが防げる他、スマートフォンからデータを送信し、医療機関とリアルタイムで最新データを共有することも可能です。

NFCというと、IT機器のペアリングやモバイル決済がよく話題となりますが、この様に医療現場でも活躍が広がりつつあることに注目です。

2014年12月15日月曜日

ワインとNFCの素敵な関係

Photo by Daniel Go (Flickr)

ワインとNFC。一見何の関係もない組み合わせの様ですが、実はこんな応用方法が開発されています。

世界各地で飲まれているワインですが、高級ワインは投機対象となる程高値となることも。そのため、市場にはかなりの偽造ワインが出回り、昨年のさる調査会社の調べでは、高級ワインの約2割は偽ワインとも言われ、深刻な問題となっています。

偽ワインで厄介な問題は、買い手が実際に開栓して中身をチェックすることが出来ない(開けるのは実際に飲む時)という点。そのため、本物のラベルが貼られたボトルを入手して、中身だけを入れ替えるという手口もあり、こうなると外見から真贋を見極めることは極めて困難です。

こうした偽ワインを防止するために、様々な方法が開発されていますが、Selinko社が開発したソリューションは、NFCとスマートフォンを利用した、ちょっとユニークな方法です。

ポイントは、ワインボトルの栓の密封シールにNFCのタグを付け、ここに認証データを記録されている点。この仕組みにより開栓するとタグが破壊されることから、開栓済かどうかの判定が出来る他、タグのデータは複製困難な暗号化されてものであることから、ユーザーはスマートフォンでこのNFCをタップすると、このボトルが真正のものかを認証することが出来ます。

「もの」の情報をデジタル化し、状態変化を記録、それらを自由に読み出し・検証出来るこうした応用方法は、今後誰もが持つスマートデバイスの普及に伴い、急速に拡がってゆくものと期待されています。