2014年9月10日水曜日

NFCで出来ること (その4) : HCEとは


「NFCとは何?」「NFCに対応載すると何が出来るの?」のポイント解説、その4。
前回のその3では、NFCを「おサイフケータイ」として使用するための課題について触れました。今回はその実装上の課題を解決する「Host Card Emulation (HCE)」について解説します。


モバイル決済をより柔軟に実現するHCE


その3で解説した様に、これまでNFCによりモバイル決済をサポートするためには、セキュリティ周りを中心とする実装上の課題を専用のハードウェアにより解決する必要がありました。特に、重要なデータを安全に保存するセキュリティ部分(Secure Element: SE)は、 データ保護・改竄防止を確実にするため、殆どのデバイスで専用チップ内にハードウェアの形で実装されています。このSEを前提とするセキュリティ実装は、市場でNFC対応デバイスが普及しているにもかかわらず、NFCを利用したモバイル決済サービスがなかなか広がらない要因の一つにあげられます。

(※) 余談ですが、iPhone 6にはNFCコントローラーとしてNXP社のPN65チップが搭載されていると推測されています。PN65では、SEはチップ内に設けられています。


NFC対応デバイスで、もっと簡単かつ柔軟にモバイル決済機能を実装し、幅広く利用出来る様にしたい。
この願いを実現したのがHost Card Emulation (HCE)です。


HCEの最大の特徴は、実装上のボトルネックであったセキュリティ部分(SE)を仮想化することで、専用チップではなくデバイス上のアプリケーションCPUでセキュリティ性の高い処理の実行を可能としています。この方式が優れている点は、この仮想化の利点を活かし、デバイス上のCPUではなくネットワークで結ばれたホスト側、すなわちクラウド上にこの処理を実装することも可能となる点です。

モバイル決済をサポートする場合の実装上の課題を、HCEによりソフトウェアで柔軟に解決出来る様になったことは、NFCベースのモバイル決済の普及に向けた大きなブレイクスルーといえます。一般のスマートフォンで簡単にモバイル決済が利用出来る様になる他、店頭で必要とされたモバイル決済対応の専用POS端末(Reader/Writer)にスマートフォンを利用することが可能となるなど、今後急速にHCE利用のプラットフォームが広がることは確実です。

既にGoogleはAndroid 4.4 (KitKat)でこのHCEをサポートしている他、クレジットカード会社大手のVISAとMasterCardも支持を表明し、これを受けて世界各国で導入の動きが加速しています。スペイン第2位の銀行BBVAやロシア最大の銀行SBERBANKで導入を予定している他、欧州プリペイドサービス第1位であるPrePay Solutionsでも、ポイント付与などのマーケティング機能を設けたモバイル決済をHCEを利用して導入予定です。


NFC ForumではHCEに関しGoogleと協業してゆく旨を表明している他、SONYも、HCEによりFeliCaチップなしでもFeliCaのモバイル決済サービス利用を可能とする「HCE-F」を発表するなど、NFC+HCEそしてスマートフォンの組み合わせにより、モバイル決済は世界中で一気に普及する勢いを見せています。

(その5に続く)