2014年9月8日月曜日

NFCで出来ること (その1)


9月9日のAppleのイベントが迫る中、予想される発表内容について世界中で報道が過熱しつつあります。iPhone6をはじめ、以前から噂されているiWatchの様なウェアラブルが登場し、NFCに対応するのでは?という予想が飛び交っていますが、「NFCとは何?」「NFCに対応載すると何が出来るの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで改めて、NFCのポイントについて二回に分けて説明したいと思います。


NFCとは


一言で言うと、無線による通信技術の一つです。非常に弱い電波を利用し、10cm以下(通常数cm程度)のとても短い距離で通信を行います。NFCはNear Field Communicationの略語であり、言葉の通り近接した場で使用される通信方式の国際規格の名称です。物理的に接続・接触しなくても、「かざす」だけで簡単に通信出来ることが最大の特徴で、このため非接触通信とも呼ばれています。

非接触通信はここ10年余りで世界中に普及し、様々な場面で利用される様になりました。最も一般的な例は交通系カードへの応用。駅やバスといった交通機関を利用する時、コンビニエンス・ストアや自動販売機で買い物をする時、カードをかざして利用したことがあると思いますが、ここで用いられているのが非接触通信です。

周波数13.56MHzを用いた非接触通信方式に関して標準規格としてまとめられたものが、NFC規格となります。国際規格ISO/IEC18092 (NFCIP-1)を中心に、関連企業185社以上が加盟するNFC Forumにて各種関連規格が制定されています。


FeliCaとNFCの関係


かざすだけで使える非接触ICカードとして、日本ではSuicaやICOCAなどの交通系カードや、nanacoやWAON等の流通系カードが幅広く利用されています。おそらく皆さんも、どれか一枚はお持ちではないでしょうか。この非接触ICカードにはSONYが開発した「FeliCaカード」が利用されていますが、この無線通信技術はNFCと共通です。

ただ、NFCとFeliCaは確かに同じ無線通信技術を使用しているものの、NFC対応の機械でFeliCaカードがそのまま使える訳ではありません。これはNFCが基本的な無線通信部分までを規定しているのに対し、FeliCaは通信上でやり取りされるデータの暗号化や処理ロジックといったカードOSの部分までを規定している違いにあります。

NFC対応デバイスでFeliCaカードと通信を行うこと(データ送受)は可能ですが、定期券の認証や電子マネーの出し入れといったFeliCaカードのサービスを利用するためには、FeliCaで規定するセキュリティ機能の実装が必要です。

このセキュリティ機能の実装方法については、FeliCa以外の主なものとしてNXP社(旧フィリップス社)が開発したMifareがあり通称Type-A (国際規格 ISO14443 A) と呼ばれている他、セキュリティ部分は独自実装を可能としているType-B (国際規格 ISO14443 A) があります。

ポイントは、この三つの方式のいずれも基本的な通信方式はNFCとして共通化されていること、セキュリティやサービス等に用いるデータの処理ロジック・対応アプリ等に違いがあるという点です。


NFCの技術的な性能


NFCが使用可能な通信距離は、先に述べたとおり10cm以下の非常に短い距離ですが、無線接続であるため、赤外線通信とは異なりポケットや鞄の中にあっても通信が可能です。お財布にカードを入れたまま、改札機や読み取り機にかざして利用している方は多いのではないでしょうか。

通信速度は106 / 212 / 424 / 848kbps のいずれかを選択可能ですが、FeliCaでは通常212kbpsが使用されています。

ICカードのメモリーサイズは様々ですが、FeliCaカードの場合数Kバイト、一般的なNFCチップでは数百バイトのものが市販されています。

(その2に続く)